【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
「…かな、めさ……?」
「この馬鹿が!あんな書き置きなんて残しておいて、そんなに泣くぐらいなら、今すぐ俺の所へ来い!」
突然現れた愛し人に、グイッと腕を掴まれ体がバランスを崩して揺れる前に、彼の胸の中へと私は収まった。
こんなことがあってもいいのだろうか?
これは私の都合のいい夢なんじゃないだろうか?
それでも、私はこう聞かずにはいられない。
「ど…して…?」
その問いに対して彼は、焦ったような怒りを含んだ声で答えてくる。
「どうしたもこうしたもあるか。お前も連れて行こうと執務室に入ってみればもぬけの殻、しかもあんな書き置きはあるし、挙句連絡も付かない。あちこち探してもすぐに見つけることは出来ないし…一体お前は何を考えているんだ?」
ジッと見つめてくる熱くて荒々しい視線。
私それを直視出来ずに俯いた。
「もう…必要ないじゃ、ないですか…」
「なに?」
「…、っ。だって、私のことなんて…」
「忍…」
上手く言葉に言い表せずに、いやいやを繰り返す私の髪を優しく梳いて、そして強く抱き締めてから、彼は静かに私の名前を呼んだ。
それだけで、ドキンドキンと高鳴る胸。