【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜


そんな彼を見ても私の一度出来てしまったモヤモヤは、なかなか晴れてはくれず…。


「お姉さん…?でも…」


愛してる、と言っていたではないか…と言葉にするのは、なんとなく憚れて口をつぐむと、ふっと微笑まれる。


「あぁ…あれは、ただの挨拶に過ぎない。あぁでも言わないと、すぐに機嫌を損ねるからな、あいつは」

「本当に?だって今まで一度も電話なんて…」



そうだ。
少なくとも私が彼の秘書となってからは、そんな存在は微塵も感じさせなかった。
なのに、今になってそんな風に言われても、にわかに信じ難い。

すると、彼は小さく溜息を吐いて、くいっと私の顎のラインをくすぐった。


「まだ、疑うのか?そんなやつの口はこうして塞いでしまおう…」

「…んんっ…」

「…本当に、お前の口唇は何回味わっても、甘いな」

「…ばか」


にやりと楽しげに微笑む彼の腕の中、それだけ呟くと私は漸く彼の胸に顔を埋めた…。


< 96 / 127 >

この作品をシェア

pagetop