【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
そんな彼を見ても私の一度出来てしまったモヤモヤは、なかなか晴れてはくれず…。
「お姉さん…?でも…」
愛してる、と言っていたではないか…と言葉にするのは、なんとなく憚れて口をつぐむと、ふっと微笑まれる。
「あぁ…あれは、ただの挨拶に過ぎない。あぁでも言わないと、すぐに機嫌を損ねるからな、あいつは」
「本当に?だって今まで一度も電話なんて…」
そうだ。
少なくとも私が彼の秘書となってからは、そんな存在は微塵も感じさせなかった。
なのに、今になってそんな風に言われても、にわかに信じ難い。
すると、彼は小さく溜息を吐いて、くいっと私の顎のラインをくすぐった。
「まだ、疑うのか?そんなやつの口はこうして塞いでしまおう…」
「…んんっ…」
「…本当に、お前の口唇は何回味わっても、甘いな」
「…ばか」
にやりと楽しげに微笑む彼の腕の中、それだけ呟くと私は漸く彼の胸に顔を埋めた…。