【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
今まで肩肘を張ってがむしゃらに生きてきた。
硬い硬い岩のような意思を貫き通して。
二度と誰かを愛したりしない。
二度と誰かを頼って生きたりはしない、と。
それなのに。
「忍、体が凍えそうだ。そろそろ中へ入れてくれないか?」
気付けば、次々と降り注がれるキスに溶かされ、この止めどなく湧き上がる想いにきちんとした名前を付ける暇もなく、自分の部屋へと彼を導いていた。
「……狭いですけど。……どうぞ」
あの人との別れから、私は部屋を新しくし…ここに異性を招いたのは彼が初めてだった。
いや、多分…。
もう、彼が最初で最後の人になるだろう。
この人ならば、私のこれから一生を掛けても、一緒にいたい…一緒にいられたらいい。
そうでありたいと、心から思った。
どうしても、怖かったんだ。
私なんて、私なんて、と勝手に自信を失くして…。
彼への愛を自分で密かに疑って、試したりなんかして。