【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜
何だっていい。
全てがもし、夢だとしても。
それが、彼の与えてくれるものならば。
たとえ二度と触れ合えなくなったとしても、今宵一夜…彼のモノでいたかった…。
そうして、私たちは軽快なダンスを踊るようにして、リビングの床を滑り…その勢いを借りた彼にふわりと抱き上げられて、そのままベッドへと攫われた。
「忍…。好きだ…。誰にも渡さない。俺だけのものになれ」
うわ言のような、甘い睦言。
彼の仄かに香る煙草のフレグランスに、私はただ彼の名前を繰り返す。
「かなめさ…ん」
真夜中の内緒話を楽しむかのように、密やかに…。
「ずっと手にしたかった。もう離さない。離れることは許さない…」
彼の熱を帯びた視線に焼かれ、私は波打ち際で跳ねる魚のように、愛される歓びに打たれ、懸命に彼の背中に爪を立てた。
愛されたい。
愛したい。
そう、心から思わせてくれるのは、もう…。
この世の中で、貴方だけ…。
真っ赤に染まる意識の中で、それだけをただ感じていた。