たとえ、涙が頬を濡らしても。



ゆっくり目を開けると、空一面赤く広がっていた。


飛び起きると、冬汰は隣でクスクス笑っていた。



「あたし、寝て…って、冬汰の膝…へっ?」


『おはよ』


「お…おはよう…」


『ごめん、ギターのせいで寝させてしまった』


「うぅん!!
多分、ここに来るまで本読んでたからかも」



あたしってば……

せっかく、冬汰と居るのに寝ちゃうなんて。


ずっと会いたくて仕方なかったのに。



『それって、読書感想文?』


「うん…読書感想文もそうだけど、数学の課題が多くて多くて…しかも全然解けなくて」


『へー。大変だな』


「ムッ」



高校を中退した冬汰はもう授業や課題やテストに縛られていないもんね。

なんて羨ましいことなんだろう…



『数学なら…教えられるかもよ』


「え?」


『公式でどうにかなるからさ。』


「ほんと!?」


『うん。
俺の家なら親、基本仕事でいないから大丈夫だけど…』


「いいの!?」


『澪春が良ければね』



俊稀はバカだから、数学わかんないし。

依知花は色々、夏は忙しそうだし…



「お願いします…」


『どうする?明日は大丈夫?』


「うん!夏休み、暇だから…」


『じゃぁ、14時にここ集合でいい?』


「うん!」



やった。


やった!


冬汰と一緒に居られる。


それだけでいい。





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