たとえ、涙が頬を濡らしても。
⇒2人だけの空間。
「お邪魔しまーす!」
『どうぞ』
約束の時間通りに待ち合わせをし、堤防から10分ほどの距離に冬汰の家があった。
冬汰の部屋に足を踏み入れて思ったことは、俊稀の部屋と全然違ったこと。
男でもここまで違うとは…
「俊稀の部屋は漫画とかあちこちに散らばってるのに、冬汰はすっごい整理整頓されてる」
『汚いと落ち着かねーからな』
冬汰の部屋はベッド、机、ステレオ、CDラックといった家具にギターが2本にアンプが置いてある。
カーテンやベッドシーツに青が多い…
『飲み物入れて持ってくるから、適当に座ってて』
「うん、ありがと!」
冬汰が部屋から出た後、ここで冬汰が毎日寝たりして過ごしているのかと想像するだけで、ちょっとだけ距離が近づけた気持ちになる。
部屋の隅に置かれたギターの前に座って、2本のギターをマジマジとみつめる。
冬汰がいつも弾いているのはアコースティックギターだけど、こっちはエレキギターだ。
濃い青色で、指紋1つ見当たらないってことはちゃんと弾いたあとに磨いているのだろう。
物をすごく大事にしてるんだね。
『なに、ギターに興味出たの?』
「へっ?
あぁ、ギターが弾けたらカッコイイなーって思って。」
冬汰が机の上にグラスを2つ置いた後、アコギを手に取った。