たとえ、涙が頬を濡らしても。



いつも堤防で見ているけど、何度見てもギターを持っている姿がカッコよくて…



『弾いてみる?』


「いやいやいや!そんな…」


『いいから』



あたしの膝の上にギターを置いて、冬汰はあたしの後に回ったと思えば、そっとあたしの手に触れた。



『人差し指はここ、2弦
中指はここの4弦
薬指は5弦』


「弦って思ったより硬くて痛いね」


『だろ?
だからギター弾いてると左手の指先が硬くなるんだよ』



初めたばかりだと、すぐ痛くなりそう…


でも慣れれば痛くなくなるのか…



『ほら、右手で弦鳴らしてみな?』


「こう?」



親指で弦を上から下へと下ろしてみたけど、いつも冬汰が鳴らしているような音は出ない。



『音が綺麗に出てないってことは、ちゃんと弦を押さえられてない証拠』


「えー…難しい」


『手、離して?』



左手を下ろすと、冬汰が私にさっき教えてくれた指のフォームをサッとして見せた。



『もう一度、鳴らしてみて?』



《ジャラーン…》



「あれ!?綺麗に鳴ってる!!」


『ちなみにこれが一番基本なCコードね』


「これがコードか…」


『他にもこんなのも』



冬汰は次々に左指のフォームを変えてゆく…



「わわわ、何がなんだか…」


『ははっ』



すると、右肩に冬汰の顎が乗っかった。


ち、近い…


そう改めて思うと胸の鼓動がドクドクと加速するのがわかる。



『俺がいなくなったら…澪春に弾いてほしいな。』



…───────



へ?




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