たとえ、涙が頬を濡らしても。



“いなくなったら?”



『そんな固まんなよ。
もしもの話ってやつだよ』


「ははは…そうだよね」


『さて、やるか』



あたしの膝からギターを持ち上げると、ギタースタンドに戻して机の前に座った。


もしも…の話。

あーダメだ。

今は考えるのはよそう。


机の前に座って、持ってきたトートバッグから数学の教科書とノート、さらに夏休み課題である数学ワークを並べた。


ひょいっと、教科書を手に取ってページをパラパラ捲り、あたしが開けたワークのページをチラリと見た。



『これ、例と同じ解き方だな』


「うっ…」


『高校行ってるんだから、ちゃんと話聞いとけよな』


「なっ…」



ご最も過ぎて、言い返せない。


高校に行かなければ、勉強という言葉から逃れられたものの、中卒など今では数少ない枠に入りたくなかった。


だけど、嫌いな授業ほど退屈でつまらないものは無い…



『ほら、これはこうやって…』



冬汰の説明に耳を傾け、大嫌いな数学ワークをみつめる…



…───────



「あ、解けた!」


『簡単だろ?』


「うん」



なんでこんなにも簡単に…!?


先生よりわかりやすいんだけど。




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