たとえ、涙が頬を濡らしても。
とにかく今は数学の課題を片付けることが先だ。
冬汰は後にわかるって言った。
『人間、いつかは死ぬのになんで知識を得ようとするんだろな』
数学のワークを解き続けているとふと、冬汰は呟いた。
「人生を楽しく賢く生きるためとか?」
『んー…どうせ無意味になるものを学ぶのもなー。』
「んー…難しいね」
『わり、変なこと言った』
ほら、すぐ話を切る。
やっぱり、あたしには言えないことなんだ。
『あ、ほらもう最終ページ』
「あ、ほんとだ!?」
解き続けて1時間ぐらいで、もう課題が出されているページまで来てしまった。
もしかしたら、あたしがバカなだけで本当はものすごく簡単なんじゃ…
『躓く理由がわかんねー…』
「だって、先生の教え方が」
『先生のせいにするな』
「うー……」
だってー。
冬汰が先生ならいいのに。
冬汰が将来、数学の先生になったらきっと、女子にモテモテなんだろうなー。
いや、そうなったらあたしが嫉妬してしまう!
『何、ムッてしてるの?』
「あ、えっと…冬汰が将来、数学の先生になったらきっと、女子にモテモテなんだろうなーって」
『…将来…か。
数学の先生…悪くねーけど高校中退では無理だな』
「えー。いいと思ったのになー!」
絶対。
合ってると思うのになー。