たとえ、涙が頬を濡らしても。



─冬汰 side─


恐れていたことが起こってしまった…

いつも発作は夜だろ…!


昼間になんて…なかったのに。


これじゃ澪春に隠しきれなくなるじゃねーかよ…


今にも泣き出してしまいそうな澪春の顔。


そんな顔、させたくねぇんだよ。


笑っててくれよ…ただ、俺の側で。

それだけで、満たされるのに。



『ただの喘息発作だ。
まだ、全然軽い方だから…泣くなよな』



軽い方…

まだ、横に慣れる小発作だ。


だけど、だんだん発作を起こす回数が多くなってきている。


呼吸不全…いつ起こってもおかしくねぇな。


薬なんかもう…半年以上呑んでない。


寿命を告げられた時点でもう、死は確定している。

なら…時間に身を任せる。そう決めた。



『ばーか、俺はどこにも行かねぇよ』


無理やり笑って、泣きそうな澪春の頭を優しく撫でる。


楓みたいな思い、させたくねぇんだよ。


笑ってくれよ。





< 114 / 241 >

この作品をシェア

pagetop