たとえ、涙が頬を濡らしても。
後、もう少しだけでいい…
せめて澪春の絵が完成するまで…持ってくれよ。
「うん…」
『なぁ…絵、描いてよ』
「今?」
『うん』
澪春は俺の手をそっと離して、スケッチブックと鉛筆を持ってベッドに持たれて座った。
「なにがいいかな。
あ、誕生日はいつ?」
『12月19日』
すると、澪春はスマホを取り出して文字を打った。
「ははっ、12月19日の誕生花はベゴニアだよ。」
『ベゴニア?』
「花の色によって花言葉は変わるんだけど…
主にベゴニアの花言葉は…っはは」
『なんだよ』
「…愛の告白」
愛の告白…?
「えっと、あと“幸福な日々”とかも!」
『…愛の告白…か。』
「…冬汰もいつか誰かにするんだろうね」
…バカ。
お前以外、ありえねぇよ。
「あ、ベゴニア 描いてあげる!」
澪春はスマホを置いて、鉛筆を手に持ってサクサクッと動かしていく。
いつの間にか小発作も収まって、呼吸が落ち着いた。
「呼吸、落ち着いたみたいでよかった…」
『言ったろ?小発作だって。
心配して泣くことない』
「…な、泣いてない。危なかったけど」
『ははっ』
よし。
これで、大丈夫だろ。
喘息持ちなんて、いくらでもいる。
その中の1人ぐらいとして、認識してくれればそこまで心配しないだろう。
澪春が好き。
愛の告白…
もうちょっと…待ってろ…────。
─冬汰 side end─