たとえ、涙が頬を濡らしても。
でも、この何気ない時間が好きだ。
もっと、ゆっくり流れて欲しい。
これは欲張りかもしれないね。
一分一秒でも長く一緒にいたい。
『早く、完成した絵が見たい』
「来週末にはできるように頑張る!
あたし、塗るのは早くて丁寧な方だから」
『じゃぁ、俺も来週末まで持ちこたえなきゃな』
「何を?」
『ん?あぁいや、こっちの話。』
“こっちの話”って言わないでよ…
って、思うけどあたしにはそう言う資格はないんだよね。
付き合ってないんだもん。
所詮、友達なんだ。
友達から一歩、踏み出せたらどうなるんだろう。
うぅん。
まだ、ダメ。
言ったら、絵を描く意味が無くなる。
『澪春はさ、理想のデートとかあるの?』
「…へ!?急にどうして!?」
『いや、なんとなく…』
そう言う冬汰の質問に、ドキッとした。
理想のデート…────
女の子なら誰もが一度は考えたことがあるだろう。
もちろん、あたしもその中の一人だ。