たとえ、涙が頬を濡らしても。



─冬汰 sideー



…寝たか。


スースーと小さな寝息を立てて寝てしまった澪春の寝顔が可愛くて。


ずっと俺の人差し指をぎゅっと握って…


まるで小さな子どもみたいに…


すぐ寝たってことは、朝からずっと描いているんだろう…


そりゃ、疲れるよな…


“4日も”ってことは、毎日疲れているのにここまで来ていたのか。


ごめんな…会いに行けなくて。


弦が切れたかなんて…嘘だ。


もう、あまり手に力が入んねーんだよ。


重い発作のせいで呼吸困難が度々続いてる。


自分の身体が重い…


微熱も続いてるし。


そっと、澪春のキャンパスバックから絵を取り出す…

スケッチブックに挟まれている画用紙を抜いて、絵を見てみると…



『えっ…』



そこには堤防で座ってギターを持って、右手を空に手を伸ばしている男の人の後ろに、女の人が立っている絵がすぐに目が入った。


女の人が後ろに持っているのは…手紙か。


しかもこの堤防、ここと同じ…


桜の木が描かれているけど…

ピンクが少なくて、緑が多い桜の木になっていた。


こういうのって、満開の桜とかを描くのが定番っぽく見えるのに。


空には綺麗な夕日が広がっていて…って


この夕焼け空…あの時一緒に見た空に似てる気がする。


オレンジのグラデーションが綺麗で…

きっと、澪春は桜の木を描く人は満開の桜を描く人が多いと見て色々考えたんだろう。


でも…なんで手紙を?


もう一度手紙の絵を見ていると、ハートが描かれていた。


…これって



画用紙の裏をめくると、薄い字で色々書かれていた…



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