たとえ、涙が頬を濡らしても。




結局、17時前に完成した絵を持って家を出て堤防に着いたけど…


17時半になっても冬汰の姿はなくて…


腕時計とひたすらにらめっこしても、心が落ち着かない。


この前行ったから、冬汰の家に行ってみようかな。


自転車に乗って堤防をひたすら漕いで、下った先を右だ。


そして真っ直ぐ行って角を左で…



自転車で左折した後、目の前に大きな看板が目に入った…




「…え」




自転車を降りて、その立て看板をよく見た。


故 汐留 冬汰 儀


と大きな文字で綴られていた…



「えっ…待って…」



「汐留さんのお宅、残念ね…
まだ冬汰くんも16歳だったのにね…」


「もう、冬汰くんがギターを背負って出掛ける姿が見れないなんて…」



お通夜案内所の立て看板を見ていたあたしを見て、喪服姿をしたおばさん二人が口を開いた…


そんな…嘘だ!


嘘だ嘘だ嘘だ…



その道を真っ直ぐ歩くと、喪服姿の人達が会場内には集まっていて…


前には冬汰の笑った写真が置かれていて、その前で喪服姿をした人達が焼香していた。



「とう…た?
えっ…なん…で」



自転車を留めて、震えた足で後退りをして壁に持たれた。


そのまま座り込んで目の前の光景をみつめた…



「夢だ…きっと、恐い悪夢なんだ」


『あんたが澪春さん?』


「…へ?」





< 134 / 241 >

この作品をシェア

pagetop