たとえ、涙が頬を濡らしても。
結局、17時前に完成した絵を持って家を出て堤防に着いたけど…
17時半になっても冬汰の姿はなくて…
腕時計とひたすらにらめっこしても、心が落ち着かない。
この前行ったから、冬汰の家に行ってみようかな。
自転車に乗って堤防をひたすら漕いで、下った先を右だ。
そして真っ直ぐ行って角を左で…
自転車で左折した後、目の前に大きな看板が目に入った…
「…え」
自転車を降りて、その立て看板をよく見た。
故 汐留 冬汰 儀
と大きな文字で綴られていた…
「えっ…待って…」
「汐留さんのお宅、残念ね…
まだ冬汰くんも16歳だったのにね…」
「もう、冬汰くんがギターを背負って出掛ける姿が見れないなんて…」
お通夜案内所の立て看板を見ていたあたしを見て、喪服姿をしたおばさん二人が口を開いた…
そんな…嘘だ!
嘘だ嘘だ嘘だ…
その道を真っ直ぐ歩くと、喪服姿の人達が会場内には集まっていて…
前には冬汰の笑った写真が置かれていて、その前で喪服姿をした人達が焼香していた。
「とう…た?
えっ…なん…で」
自転車を留めて、震えた足で後退りをして壁に持たれた。
そのまま座り込んで目の前の光景をみつめた…
「夢だ…きっと、恐い悪夢なんだ」
『あんたが澪春さん?』
「…へ?」