たとえ、涙が頬を濡らしても。



─夏翔 sideー


お通夜が始まって1時間が経とうとしていた頃、会場の外で一人壁に持たれて座っている女の人が目に入った。


真っ白いワンピース…

黒じゃないことから、このことを知らない人だ。


きっと、あの人が兄貴が言ってた…



恐る恐る近づいて声を掛けてみた。



『あんたが澪春さん?』


「…へ?」



震えた手足、唇…


側に置かれたキャンパスバックからはスケッチブックが目に入った。


間違いない。この人だ。



『俺は冬汰の弟の夏翔』


「弟…?」


『あんたの事は、兄貴からの最後の手紙で読んだよ。』


「待って、何言って…」


『兄貴は死んだんだよ!』



思わず声を張り上げてしまった…


俺の声にビクッと震えだした澪春さん。


なぁ、兄貴…


俺にどうしろってんだよ…!!




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