たとえ、涙が頬を濡らしても。
…───────
なんでだろう…冬汰の匂いがする…
「冬汰…?」
はっ…
目が覚めてベッドから飛び起きた。
…冬汰
『目、覚めたか?』
「あたし…」
『あの後、気を失って倒れたんだよ』
倒れた…?
『ほら、とりあえず水飲んで』
「ありがと…」
渡された水を飲んで、深呼吸する…
ほんとに夢じゃないんだ。
時計を見ると8時半と針が指されていた。
朝…
『あ、ごめん。スマホ勝手に使って澪春さんの親に電話入れた』
「へ?あぁ、いや、…ありがとう」
『それと、落ち着いたら兄貴の手紙…読んでやってよ』
あ、手紙…
枕元に置かれていた手紙を持つ手が震えた。
冬汰の字…
でもまだ…
『また、指先震えてる…』
そう言うと、震えた手をぎゅっと握ってくれた。
「ごめんね…弟くん。」
『夏翔でいいよ。』
「冬と夏…か」
『兄貴は冬に生まれたし、俺は8月。単純だろ?』
「うん」
拘束違反の茶髪に、ピアス…でも、笑った顔とか外見とは違って冬汰にどことなく似ていて…
少し、落ち着いてきた。
冬汰の部屋だからかな…?
『朝ごはん、すぐ用意出来るけど…食欲あるか?』
「ちょっとだけ」
『親も色々、兄貴のことで大変だから朝からいねぇし、気を使わなくていいからな』
「ありがとう」
『落ち着いたらリビングに来いよ?
階段降りて右に洗面所もあるし勝手に使っていいからな』
「うん」
そっとあたしの手を離して、夏翔くんは部屋を後にした。
ベッドから立ち上がって、窓を開ける…
空は雲ひとつない青空が広がっていて…
まるで冬汰が『笑え』って言ってるみたいで。
そっと青空に手を伸ばす。
冬汰…
「ねぇ…そっちに行かせてよ…」
会いたいよ…
ねぇ。