たとえ、涙が頬を濡らしても。



確か、依知花と一緒に作ったクッキーをあげた日、

『澪春が1から作ったクッキーが食べたい』

って、あの日言ってくれたよね。


結局、作ってあげられなかったね…


ごめんね…遅くなったけど、今からでもいいかな?



「依知花、生地作りからあたしに教えて?」


「うん!!」



依知花はさっきと違って、目を大きく開いて頷いてくれた。


髪をキュッと後ろでひとつに束ねて、三角巾を付けてエプロンを付けて、にっこり笑った。



「澪春ちゃんも、早くエプロン着て三角巾!」


「え?あたしもするの!?」


「澪春ちゃんがしないでどうするの?
ほら、早く早く!」



依知花にされるがままエプロンと三角巾を付ける…


まさに調理実習の格好じゃん…



「まずはさっき測った、薄力粉とお砂糖をこのボウルに振るい入れて!」


「うん…」





< 145 / 241 >

この作品をシェア

pagetop