たとえ、涙が頬を濡らしても。



…───────


依知花に優しく丁寧に出来上がったクッキーを、前と同じ水色のラッピング袋に入れる。


上手く、出来たかな…?



「澪春ちゃん、早く行ってきて!」


「でも片付けが…」


「そんなのいいから!
冬汰くんと早く話してきなよ」



そう言って、あたしの背中を押して廊下へ出すと依知花はにっこり笑った。



「依知花…」


「ほら、行く行く!!」


「…ありがとね!」



また依知花に背中を押されてあたしは振り返ることなく、クッキーを鞄に閉まって廊下を走った。


冬汰に会いたい。


話したい…!


たとえ、返事がないって分かっても。





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