たとえ、涙が頬を濡らしても。



ー夏翔 sideー


澪春が俺のピアスに触れた時、心の中でなにかが跳ね上がった気がした。


…恋?


そんなまさか。

ありえねぇだろ。



「夏休み、冬汰に夏休み課題の数学を教えてもらってたのが最近のように感じる。」


『兄貴もほんとはもっと上の高校行けたけど、母さんが何かあった時にって地元を受けさせたんだよ』


「何かあった時…」



澪春は一瞬にして、懐かしむ顔から暗い顔になってしまった。



『わり…』



何やってんだよ…!

笑わせてやりたいのに、兄貴の話しだとどうしても暗くしてしまう…

そんなこと、兄貴は望んでねぇ…


兄貴の手紙の裏に書いてあった。

“堤防でもし、澪春に会ったら…澪春を頼む。
もし、泣いてたら…笑わせてやってくれ”

って。

笑わせてくれって…どうすりゃいいんだよ!


あーもう、わっかんねぇー!


頭を抱えると、澪春が不思議に思ったのか顔を覗き込んできた…



『わっ…』



ち、近いって…!!!!


思わず目を逸らし、心臓の鼓動を落ち着かせようと必死になる。



「大丈夫?」


『な、なんもねぇーよ…ただ』


「ただ?」


『ただ…笑ってくれよ。
いっぱい、これからも泣くことあるだろうけどさ…』



好きな人が死ぬなんて…俺にはもちろん澪春の気持ちが理解できねぇ。


好きなヤツなんてできた事ねぇし。





< 155 / 241 >

この作品をシェア

pagetop