たとえ、涙が頬を濡らしても。



俺は澪春に何もしてやれなくて、あいつじゃなきゃ澪春を満たせないと分かっているから動けなくて。


どうしようもない気持ちが高まるばかりで。



「ごめんね…」


『なんで澪春が謝んだよ!』


「冬汰が居なくなってこの一ヶ月、ものすごく怖かった。いっぱい泣いた。そして、俊稀と依知花にいっぱい迷惑をかけた!」


『…っ』


「あたしと居ても、全然楽しくないでしょ…」


『それ以上…言うなよ。』



澪春の頭を優しく撫でて、今にも泣きそうな目を見てつい、頬を抓る。



『変な顔』


「いひゃいよ」



抓るのをやめて、頬に手を当てる。



『俺は、この先もずっと澪春と一瞬に居たい。
澪春を笑わせてやりたいし、抱きしめたいし…』


「…バカ」


『なっ、バカはないだろ?』



澪春にはすぐ、冗談にされてしまう。


俺はこんなにも本気なのになんで伝わんねぇんだよ…


今でさえ、お前の唇を奪いそうになる…


でも、そんなことをしたら澪春を傷つけるだけだ。



「ま、俊稀らしいけど」


『俺は、いつかあいつを越えてやるからさ。
俺に振り向く準備しとけよな?』



澪春に意地悪そうに笑ってみせると、澪春はまた『バカ』と言った。


今はそれでいい。


必ず、澪春の心を奪ってみせるから。





ー俊稀 side endー



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