たとえ、涙が頬を濡らしても。
もう、描くことも考えていなかった。
スケッチブックも持ち歩いていないし、鉛筆や色鉛筆も。
『澪春の絵、けっこう好きだからさ』
前に冬汰があたしに言ってくれた言葉…
『別にコンテストに出すことを目標にしなくていいからさ?』
「そうだね」
『ま、出すって言うなら次は俺を主役に描けよ?』
「はー?ないない!」
今日の俊稀、面白いや。
ちょっと、前みたいに笑えたかな?
『はは、冗談!
やっぱ、じっとしてると肌寒いな…
あと、1本跳んだら帰るか』
「うん。次はちゃんと見てるから」
そう伝えると俊稀は嬉しそうに歯を出して笑ってくれた。
『瞬き厳禁だからな!』
「それは無理」
『なっ、まぁいいや。
絶対に跳んでやるからよ!』
軽くアップをして、スタート地点に行く俊稀。
ここ最近、練習に付き合っていたのにその姿が懐かしく感じてしまった。
あたし、俊稀のこと見れてなかったんだって気付かされてしまった。