たとえ、涙が頬を濡らしても。
俊稀はその場で2回、軽く上に飛んだ後、真剣な眼差しでまっすぐ、前を見つめた。
『絶対に跳んでやる』という心の声が聞こえるみたいに。
そして、ポールを持って走り出す…
俊稀の背中を押すかのように、強い風が吹いた。
ポールを使ってしなやかに身体を曲げてバーの上を飛び越える瞬間、日が暮れる最後の夕日の光が俊稀を照らすように輝いて…
そのままバーを飛び越えて、背中からマットに落ちる俊稀はまるでスローモーションで…
「俊稀!!」
俊稀の元へ行って手を伸ばす…
「わっ…!?」
が、逆に俊稀に腕を引っ張られてそのまま俊稀の胸へ倒れ込んでしまった。
耳元で俊稀の息づかいが聴こえて…
そのままぎゅっと抱きしめられてしまった…
『っはぁ…はぁ…どう?
俺を描きたくなった?』
「うん…ものすごく、あの瞬間を絵に納めたくなった」
あの夕日は何色を混ぜようか…
って、頭の中で考えてしまう。
『なら、良かった』
「俊稀…ありがとう」
『はは、どういたしまして!
だからさ、もう少し…こうさせて』
すると、またさっきよりぎゅっとあたしを抱きしめてきた。
俊稀…
『澪春が好きだ。』