たとえ、涙が頬を濡らしても。




『またコンテスト出すの?』


「うぅん。あれが最初で最後。」



そう。


本当にあれが最初で最後だ。


元からコンテストは嫌い。


自分が描きたい絵を、描きたい時に描く。


あたしらしく、マイペースで描いていきたい。


だから…もう出さないと決めた。



『…そっか。』


「うん。
だから、あたしの絵なんか見ても何も変わらないよ?」



絵を描く手を止める。


こんな自己満足の絵…誰も望まない。



『これが唯一、澪春に会うための理由だったんだけど…』


「どういうこと?」


『だって、理由作らないと…会いにくいって思って。』



…その気持ち、懐かしい。


初めはピックを拾ったことが冬汰に次、会うための理由だった。


そこからはただ、冬汰のことが気になって…

ほんの些細なことを理由にしてた。


会えない日は寂しくて…

でも、会えた日はものすごく嬉しくて。



『澪春のこと、もっと知りたいって思ってるよ』




…─────?






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