たとえ、涙が頬を濡らしても。



夏翔が走り去ったと同時に急に降り出した雨。


ギリギリ屋根で助かったけど…

画用紙と鉛筆を置いて、屋根の外に出て雨を浴びた。



「冬汰…泣いてるの?」



雨空を見上げて問うても、雨が降り続くだけ。


あたし、変われてないよね?


冬汰に会えなくなった日からなにも。


まるでモノクロの世界に居るみたいだよ。


画用紙に描いた絵に色を付けても、全然華やかに見えなくて…



『澪春!!』


「俊稀…」


『バカ、風邪ひくぞ』



あたしの腕を引っ張り、屋根の下に連れていく俊稀。


俊稀こそ濡れてる…


きっと、マットの片付けの途中だったのかな?



「ごめん。
でも俊稀も風邪ひかないでよ?」


『俺はバカだからひかねーし』


「はは、なにそれ、自分のことバカって認めるの?」


『なっ、…まぁ、いいや』



そうニカッと笑う笑顔が眩しい。


まるで俊稀ならこの雨を晴らしてくれそうにも思えるぐらい。


そんなふうに、笑いたい。




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