たとえ、涙が頬を濡らしても。
あたしが笑った事でやっと、落ち着いた俊稀は涙を拭った。
『澪春があいつのせいで泣いたあの雨の日の後に、あいつと会った日…
もうすぐ死ぬって言われて、何ふざけたこと言ってんだよって思った。』
「うん…」
『だけど、あいつ目に涙を浮かべながら俺に“澪春を頼んだ…俺の代わりに澪春を幸せにしてくれ”って言われたよ』
「冬汰が…!?」
『ま、“言われなくてもしてやる!”って返したけどな』
「俊稀らしいね」
冬汰はあたしの幸せばかり願ってたんだ。
自分のことより…
『それにあいつ、澪春のことすげー大事に思ってたよ。』
「え?」
『知らなかったんだろ?あいつの連絡先』
「うん」
『あいつ、強いよな。
自分にも澪春にも甘えたくなくて、一人で病気と闘ってさ…。
澪春に心配かけたくないから病気のことを黙って、絵に真正面から悩みながらぶつかっていく澪春の姿が、一番元気くれるって言ってた。』
冬汰…
あたしもちゃんと冬汰に元気を与えられてたんだ…
俊稀と会ったこと、何一つ教えてくれなかったもん。
「…冬汰」
『あと、これがあいつからの最後のLINEだ。』
俊稀はスマホをタップして、あたしに渡した。