たとえ、涙が頬を濡らしても。
俊稀とは大学は別だけど、せっかく大学生になったということで、同棲生活を始めている。
些細なことで言い合いになったり、喧嘩ばかりするけど…
大体、俊稀が折れてくれて、あたしの好きな甘いケーキといったお菓子を買ってきてくれて、許してしまうハメになる。
ドアを開けると、またいつものように靴を揃えていない俊稀の靴。
これも何回も注意してるのに一向に直らない。
だけど、この靴を直すのももう日課になりつつある…
ちょっと甘いかな?
『おかえりー
って澪春、何笑ってんだよ?』
「いや、何も?」
大学が違うあたし達は家でしか一緒には居られない。
帰り道にたまに会うぐらいだ。
この前も、たまたまあたしが同じ学科の男友達と帰り道に二人で話していただけで、俊稀はヤキモチ焼いてムスッとしてたし。
「ね、今日オープンした駅前のケーキ屋さんでケーキ買ってきたんだけどさ!」
そう言って、ケーキの箱を見せると俊稀は笑った。
『ははっ、俺たち、同じこと考えてんなー!』
「俊稀も買ったの!?」
『だって、澪春最近忙しくしてるし、ケーキ屋のこと忘れてそうだし…
何より、甘いもん食って笑顔にさせてやろうかなーってさ』
そこまで言うと俊稀は照れくさそうに頬をかいた。
俊稀…
「ありがとね?」
『い、いいから早くギターとか降ろせよ?』