たとえ、涙が頬を濡らしても。



そう、大学でフォークソングサークルに入ったのだ。


夏翔と気まずくなって少しして、たまたま堤防でギターを弾く夏翔に会った。


その姿は冬汰とは全然違ってすっごくぎこちなくて…


『もうやめだ!』って不貞腐れた時に、サウンドホールから何か白い紙が見えたのが始まり。


二人して紙を出してみると、そこには冬汰の字でメッセージが書かれていた。


このギターは澪春にやる。
弾くか弾かないかは、自分で決めろ。


って。


そんなの、弾くに決まってるじゃん!

とは言っても、本当に始めは弾けなくて大学でサークルに入ってようやく弾けるようになったぐらいだ。


冬汰のようにはまだ弾けないけど…


ギターを下ろして、そっとギターケースに触れる。

冬汰が大事にしてたギター…

そんな大事なものを託されたからには、冬汰以上に大切にしたい。



「ケーキ、冷蔵庫に入れるね!
あ、今日は晩御飯軽めにしよっか?」


『そうだな。』



ギターケースを見て、俊稀は少し冬汰のことを思い出したのだろう。


俊稀はあたしの中に、まだ冬汰がいることをどう思っているのかな?


それは怖くてずっと聞けていない。





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