たとえ、涙が頬を濡らしても。



みんなは大人になっていくけれど、あたしの心の中にいる冬汰はまだ16歳のまま。


たった16歳でこの世を去った…

もしあの時、画用紙を買った帰りに堤防に寄り道をしなければ、冬汰と出会うことはなかったのかな…


少しでも時間がズレていたら…

出会わずに終わっていたのかな…?


冬汰が好きで好きで堪らなくて、どうしようもなかったこの気持ち。

あの時、描いた絵はグランプリとまではいかなかったけど、準グランプリに輝いた。


美大では絵のことも、深く深く学べて毎日が勉強中。

でもコンテストには一作品も出せていない。


締切日にわざと間に合わせなかったり、土壇場で辞めてしまう。


あれが最初で最後って決めたから…

だけど、冬汰は怒ってるよね…


俊稀は無理しなくていいって、言ってくれている。

その言葉に甘えている自分が嫌。


美術教師を目指して、日々絵の楽しさを学んでいる。

けど、自分は本当に心から絵を楽しいと思っているのか?

と、つくづく考えてしまう悪い癖。


その度にあたしは、冬汰のギターを弾く。

どうしたらいいかな…って

ギターに聴いても、返事はないのに。





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