たとえ、涙が頬を濡らしても。
一瞬見つめ合ってから、何度も何度も角度を変えてキスをする。
『澪春…』
「あっ…んっ」
口の中で俊稀の舌があたしの舌をかき回す…
思わず出る声…
でも、嫌じゃないこの感覚…
「しゅん…あっ…はぁ…」
『みは…る』
お互い名前を呼びながら交わす唇…
最後は決まって、唇をゆっくり離す…
「しゅん…き」
『感じてる?』
「…はぁ」
息が上がって、言葉が出てこない。
『勢い過ぎたか?』
「うぅん…大丈夫」
『それ、誘ってる?』
「も、もう!
夕御飯の支度しなきゃ…」
俊稀から離れて一歩を踏み出そうとした時、身体が揺れて倒れかけたところを俊稀の腕が受け止めた。
『感じ過ぎ…
ちょっと、休め』
「わっ!?」
俊稀はあたしを抱っこしてベッドに連れて行った。
でもこの時、思い出したのは
あの夏祭りの帰りに、家まで冬汰にお姫様抱っこで運んでもらったことだった。