たとえ、涙が頬を濡らしても。
─俊稀 side─
澪春と付き合ってもうすぐ5年目に入る。
だけど、このように澪春はあれから何度も何度もあいつとの思い出を思い出して、ふとした瞬間に泣いてしまうことがある。
目の前に居るのは俺なのに、口に出す名前はあいつの名前…
美大に入って、絵を真剣に学び直して毎日絵を描いたり、たまにギターを弾いたりして毎日頑張ってる。
澪春の夢はあいつの夢。
叶えるために必死に頑張ってる。
悔しいけど、それだけは奪いたくない。
俺のこと、好きだって言ってくれるけど…
心のどこかではまだあいつのことが好きだって事ぐらいわかんだよ…!
あいつが生きていれば、俺はきっとここには居ない。
澪春の隣にはあいつが居るハズだ。
「ひくっ…ひくっ…冬汰ぁ」
『大丈夫…大丈夫…』
こればかりは、何度慰めても慣れない。
俺の名前を呼べよ…