たとえ、涙が頬を濡らしても。



18時になる前、練習中の俊稀と分かれ興味本位で自転車で堤防まで寄り道して帰ることにした。


もう18時を過ぎたとだけあって、夕日が沈みかけている。


もうすぐ梅雨が来てしまう…

そんな5月だ。



「あっ…!!」



1人の人影が見えた…

あの位置!昨日と同じ!!


自転車を止めて堤防を下ると、背中を持たれて空に手を伸ばしている冬汰の姿。



「冬汰!」



名前を呼ばれてビクッと肩を動かせた冬汰はムスッとこっちを見る。


いや、なんで怒るの?



「あ、そう!これ…ピック」


『ありがと』



ブレザーのポケットからピックを出して、冬汰の手のひらに置くと、冬汰はちょっと嬉しそうにそれをみつめた。


ギターが本当に好きなんだね…



『今日は遅かったな…』



目にかかる前髪から見える綺麗な瞳がものすごく綺麗で…



「今日は部活!美術部だよ」


『へー。絵、上手いんだ』


「いやいや…スケッチばっかりで、コンテストとかにはまだ全然出せるまでいかなくて…」



自分の自信のなさに、目線がどんどん下がってしまう。


周りの子はコンテストに出すために、一生懸命頑張っているんだけど、あたしにはなかなかその勇気が出ない。


絵を描くのはすごく好き。

だけど…。




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