たとえ、涙が頬を濡らしても。



夕飯を食べ終わり、お風呂を上がったあと、2人して買ってきたケーキをテーブルに並べた。


でも何故か、俊稀も二個ずつじゃなくて3個ずつ…


不思議に思って俊稀をみつめる。



『冬汰の分も買ってきた』


「俊稀…」



あたしが毎日、冬汰の写真の前にお供え物をしているからか…


絵の素材として、冬汰にギターを構えて撮らせてもらった写真…


恥ずかしそうに…でもどこか楽しそうに笑う冬汰の写真はその日に撮ったものしかない。


もちろん、ツーショット写真もない。



『澪春があいつのこと、まだ好きなことぐらい気付いてっから』


「…え?」


『俺を見ているようで、全然見てねぇからな…』



そう俊稀は寂しそうに笑った。



「ごめん…あたし…」


『って、そんな話したくないし、ほら好きなの選べよ?
まぁ、澪春は生チョコケーキだろうけどな!』



そう言って笑うと、俊稀は生チョコケーキをお皿の上に乗せてあたしに渡した…



「俊稀…」


『バカ、泣くなよ?
いくら澪春があいつを見てても、俺はお前を離すつもりはねーから』


「うぅ…泣かないけど泣きそう…」




どうしてこんなにも、俊稀はあたしの側に居てくれるのだろうか?


優しくしてくれるのだろうか?


そのあたしを包み込んでくれる手、太陽みたいな暖かい目…





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