たとえ、涙が頬を濡らしても。



一度は、冬汰の写真を飾るのをやめた方がいいのかなって思って引き出しに仕舞ったことがあった。


でも、俊稀はあたしが気付かないうちに冬汰の写真を引き出しから出して、立ててくれていたことがあった。


仕舞ったはずの写真が出ていることに気が付いたあたしを見て、俊稀はこう言った。

『冬汰との思い出に蓋なんかするなよ…』と。

予想外の一言にびっくりした。

『澪春の悲しむ顔…見たくねぇ』って。

いつも俊稀はあたしの気持ちを第一に考えてくれていた。



手を合わせ終わったあと、俊稀の口元は笑っていた。



「冬汰と何話してたの?」


『秘密!』


「えー!?」


『ほら、食べるぞ!
俺は抹茶ケーキな!』



秘密って…


そう言えば、冬汰と俊稀の二人だけの秘密の関係については全然話してくれない。


当時、どんなやり取りをしていたのかとか…


最後のLINEの内容しか知らないままだ。



『いっただきます!』


「いただきます」



フォークで抹茶ケーキを1口切って食べた俊稀は満面の笑みだ。


可愛い…





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