たとえ、涙が頬を濡らしても。

⇒偶然の出会い




大学終わりに、ギターを背負ってそのまま、ちょっと買い物に行こうと考えから人が多い街中を歩く…


ギターは必ず持って行ったら、持って帰るのを徹底している。


冬汰の大事なものを置いて帰るとは、冬汰を手放すのと同じだからだ。


ふと、ガラスに映る自分を見て、微笑む。

もうすっかり、ギターを背負った姿も見慣れたものだ。


ギターを弾こうだなんて、思ったことなかったけど…

あの頃の楽しそうにギター弾く冬汰の姿を思い出して、日々ギターの練習に励む。



「あ、あの!!」



後ろから突然、大きな声がして振り返ると、そこには茶髪のセミロングをした女の人が立っていた。


…見たことのない顔だ。


きっと、人違いだろう。そう思って愛想笑いをしてまた歩きだそうとした時…



「澪春さん…じゃないですか?」



そう言葉を掛けられた。


あたしの名前…なんでこの人が知ってるの?


も、もしかして…

会ったこと合ったのかな!?

でもいくら記憶を遡っても、目の前にいるこの子と似ている人の記憶もない。

また、たまたまあたしと同じ名前の友人をお持ちなのだろう。



「人違いじゃないですか?
あたしあなたのこと…」


「汐留 冬汰」



そう口にした女の人…


冬汰…?



「なんで…冬汰のこと」


「そのギター、冬汰のでしょ?」



あたしのギターを真っ直ぐ指を刺された。






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