たとえ、涙が頬を濡らしても。



『今、絵…あるなら見せてよ』


「…想像以上にすっごく下手だよ?」


『自分の価値を下げんなよ?
ほら、見せてよ』



あたしは右手で握っていたキャンパスバックから、スケッチブックを取り出した…


まだ、残りの枚数がある前のスケッチブック。


それを冬汰に渡すと、もう冬汰の姿を見られなくなった…


自分の絵を見られるのがすっごく恥ずかしくて…



『似顔絵と…風景画か』


「下手だからあんまり見ないで…」


『だから、自分の価値を下げんなって言ってんだろ?
俺、お前の描く絵…けっこう好き』



その言葉にパッと顔を上げると、あたしの絵を見て微笑んでいる。


ずっと。待っていたのかもしれない。


この一言を。




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