たとえ、涙が頬を濡らしても。
耳元で聴こえるスースーっとした寝息…
は!?寝た!?
まさか、寝ぼけて押し倒したの!?
やれやれと言わんばかりにあたしは俊稀の身体を押し退けて、何とかして下敷きから抜け出した。
「仕方ないなぁもう」
膝の上に俊稀の頭を置いて髪を撫でた。
そういえば…
冬汰と最後に会った人、あたし冬汰の膝の上で寝ちゃったんだ…
なんてバカな時間の過ごし方をしたんだろう…
あれが最後だって分かってたら寝なかったのに。
いっぱい話したかったのに…
あの時間でもっと、冬汰のことを知りたかった。
5年が経った今も、冬汰冬汰ばっかりだ。
「ひくっ…くひっ…」
どうして涙が止まらなくなるの?