たとえ、涙が頬を濡らしても。




友達に渡しても、「絵、上手いね!ありがとね!」とかしか、言われてこなかった。


ましてや、好きだなんて…誰にも。



『コンテスト…出せばいいのに。』


「いやいや、あたしの絵なんて到底…
周りの子たちの方が…ずっとずっと才能がある。」



まただんだん目線が下がってしまう。



『澪春』


「ん?」


『ははっ』



冬汰の方を見ると、あたしの右頬を冬汰が突いた。


うっ…それ中学の頃に流行ってたアレだ。


こんなことにあたしが引っかかるなんて…



『俺は見たいけどな。
澪春の作品が展示されるのを…』


「…でも」


『お前には、“まだまだ時間がある”。
じゃ、頑張れよ!』



そう冬汰はあたしにスケッチブックを渡して、ギターケースを持って歩いて行った…



「あ、…えっと、またね!」



そう言っても、振り向きもせず無反応で歩いていく冬汰の姿をしばらく眺めた。


コンテスト…


あたしも…出してみようかな。


コンテスト締切は10月上旬…

受賞者発表は11月下旬…だっけ?


今ならまだ、間に合う!

そのコンテストに出す他の子もまだ、作品案を何枚か描き始めているだけだ。


頑張ってみるよ…!


まだまだ時間があるもんね!



「よっしゃ!!」



その場から立ち上がり、目の前に広がる夕焼け空に目をキラキラさせた。


冬汰も…見てるかな?


あたし、やってみるよ!


下手なりに頑張って描くから…





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