たとえ、涙が頬を濡らしても。
⇒近くて…遠い君。
無事、試験を終えて夏休みに入った。
外は夏本番に入り、気温が毎日高くて暑さで気が滅入ってしまう。
そんなお盆休みの今日は、楓さんと夏翔と一緒に冬汰のお墓参りだ。
俊稀は行ってこいって、笑って背中を押してくれた。
待ち合わせ時間の朝10時
待ち合わせ場所の駅前が見えると、もう二人は先に着いていた。
「おはよう!
ごめん、待たせて」
「おはよう!
澪春さんも来た事だし、行こっか」
『だな。』
夏翔を先頭に歩き始める…
もう夏翔も21か。
ふと、前を歩く夏翔の後ろ姿を見て思う。
もうすっかり大人になって、あの頃の夏翔の面影は薄れていた。
初めて会った時は、茶髪にピアスだったよね。
冬汰が亡くなった後、真っ当に生きるために黒髪に戻して…ちゃんと学校に行くようになって。
そんな夏翔は今、大学に行って夢を追っている途中。
その夢については、教えてくれないけど…
『大丈夫か?』
「へ?」
『澪春の事だから、まだ心の整理付いてねーんだろ?』
「…」
夏翔に一瞬で心を見抜かれた…。
この5年、あたしは何をしてきたんだろうって思った。