たとえ、涙が頬を濡らしても。



徒歩20分程でお墓がズラリと見えた。


楓さんは先にお花を買いに行ってくれた。

夏翔はバケツに水を汲んで手桶を持って、たくさんあるお墓を横にあたしの前を歩いていく…


そして通路に入り、立ち止まった。


そこには、汐留家之墓と彫られたお墓が目に入った。


静かに夏翔は荷物を下ろして、そっと手を合わせた。

それを見て、あたしも手を合わせ目を閉じる。


ここに…冬汰がいるの?


お墓を見た瞬間、本当に冬汰がこの世に居ないことを再認識させられた…


ふと、遺体となった冬汰の顔を最後に見たのを思い出した。


棺桶を覗いた時のこと…


冬汰の安らかに眠る表情が…


冬汰…






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