たとえ、涙が頬を濡らしても。
そしてお墓を綺麗にした後、楓さんは左右にお花を添えた。
「後、これね」
「それ…」
楓さんは紙袋から小さな鉢に入ったお花を取り出した。
「ベゴニア…よね。
冬汰が澪春さんからこの絵を貰ったって、嬉しそうに…大事そうに話してたから」
『その絵、ちゃんと綺麗に残してあるよ』
「えっ…」
あの日、描いた絵…
冬汰の誕生花…────
「すぐ、枯れちゃうかもだけど…
冬汰は嬉しがるかなって」
「…冬汰」
楓さんが小さく笑って、ベゴニアをお墓に供えたのを見ると、夏翔はお線香を取り出して、ライターを付けた…。
お線香の煙が風によって、空高く上がっていく…
それを見て、楓さんと夏翔は静かに手を合わせた。