たとえ、涙が頬を濡らしても。
付き合ってしばらくした後、気まずい雰囲気から戻った夏翔と放課後、一緒に居た時だった。
えらく夏翔に嫉妬して、弱いくせに強気で夏翔に絡んで、慌ててあたしが説明したね。
冬汰の弟って知った時の俊稀顔、ほんと目が点になってたし。
『何、笑ってんだよ?』
「いや、なんでもない!」
首を傾げる俊稀に鼻歌混じりで前を出て歩く。
マンションの下まで降りると、夏翔は壁にもたれて待ってくれていた。
『夏翔、久しぶりだな!』
『そうっすね…』
「夏翔、ごめんね?
ここから家に向かうなんて…」
地元を少し離れて住んでいるここからでは、冬汰の家までは距離がある。
『だと思ってもう、タクシーあそこに呼んでっからよ!』
「え?」
俊稀はタクシーに乗り込んで、手招きをした。
夏翔と二人、顔を見合わせてクスッと笑ってあたし達も俊稀に続いてタクシーに乗り込んだ。
「俊稀、ありがと!」
『ははっ』
俊稀、ありがとね。
嫌な顔一つ…しないもんね。