たとえ、涙が頬を濡らしても。
タクシーに乗って、冬汰の家に着くと冬汰のお母さんがあたしを見て、涙してしまった…
『母さん、ずっと待ってたもんな…』
「えっと、すみません…ずっと…会いに来なくて」
知らなかった…こんなにもあたしを待っていてくれていただなんて。
そういえば、お通夜の日もご挨拶できる状態じゃなかったから、初めてお会いするんだ。
「ごめんなさいね…つい、泣いてしまって。
さぁさ、上がってください。」
冬汰のお母さんに頭を下げて、家の中へとお邪魔した。
家に来たのって…1回だっけ?
少し、懐かしい…
リビングに招かれると、テーブルにはアルバムがズラリと並べられていた…
「冬汰の小さい頃の写真…見せてあげたくてね」
椅子に座ると、お母さんはお茶を出してくださった。
お礼を言うと、にっこり微笑んでくれた後、椅子に座って一枚のアルバムを手に取って見せてくれた。
「冬汰が生まれた時の写真よ」
そこには、小さな赤ちゃんの写真が写っていた。
通常の赤ちゃんよりものすごく小さくて…
「超未熟児で体重わずか800gだったのよ。
会えるまで時間がかかって、しばらくしてから病気が分かったのよ。」
「そんな…」
次のページにはいくつもの管に繋がれた冬汰の写真が目に入った。
「小学校もあまり通えなくてね…
入退院ばかり繰り返していたせいか、お友達もできなくて。」
え…─────
夏翔は違うアルバムを開いてあたしに見せた。
そこには入院している冬汰の数々の写真があった…
細くて、寝たきり状態のようにも思えた…