たとえ、涙が頬を濡らしても。



家事をしていたらあっという間に検診の時間が近づき、支度をしてすぐに家を出た。


病院に行くと、お医者さんからは「このまま順調にいけば、安産になりますよ」と、笑顔で言われた。


病院を出ると、もうすっかり秋へと季節が移り変わり、半袖では少し肌寒くなってきた。



「早く、会えるといいねー」



そうお腹の赤ちゃんに話しかけると、お腹を蹴られた。

初めは痛かったけど、もう慣れた。

俊稀のように優しい子に育って欲しいな…



信号に近付くと、もうすぐ赤に変わると合図が出ていて、足を止める。

赤に変わった瞬間、一人の女の子が道路に飛び出した…



「危ない!!」




《キィィィィィィィィィィィィ》




走って女の子を庇うと、その瞬間、身体が宙に浮いた…


周りの景色がまるでスローモーションのように見えてその瞬間、あたしは意識を失った。








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