たとえ、涙が頬を濡らしても。



ここは…どこ?


一面、真っ白で何も見えない…


あたし、死んだのかな?


冬汰に…会えるのかな…



『澪春』


「へ?」



名前を呼ばれて振り返ると、そこにはあの頃の冬汰の姿が目に入った。


冬汰はあたしに近付いてきて、横から優しく抱きしめてくれた…



『お腹、大きくなったな』


「冬汰…なの?」


『他に誰に見えんだよ?』



そうクスッと笑う冬汰…


冬汰だ…


冬汰がいる…!


ずっとずっと会いたかった冬汰が目の前に。


冬汰が亡くなって、今年で8年が過ぎた。



『会えて嬉しいよ』


「あたしも、ずっと冬汰に会いたかった」



冬汰に触れられる…この感覚が信じられなくて思わず泣いてしまった…



『ったく。泣くなよな?
俺が死んで、お前何回泣いてんだよ』



クスクス笑って、優しくあたしの頭を撫でてくれた冬汰。


懐かしいこの感触…

大きな手…



「だってぇ…ひくっ…ひくっ…」


『ごめんな…何も言わずに死んで』


「うぅん」


『デート…誘いたかったのに…』


「うぅん」


『もしも生きてたら、お前と素敵な家庭築いてたのかな?』


「…」


『なーんてな。
もしもなんてねーよな。』



寂しそうにする冬汰をぎゅっと思わず抱きしめた…


そんな顔、しないでよ…





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