たとえ、涙が頬を濡らしても。
─俊稀 side─
澪春…澪春…
病院から電話があり、駆けつけた時には澪春は集中治療室に居た。
周りの人の証言では、信号が変わった際に飛び出した女の子を澪春が庇ったと聞かされた。
女の子は幸い、大きな怪我はなかった…
しかし、澪春は妊婦なんだぞ…!
なんで澪春が…
一命を取り留めた澪春は頭に包帯を巻いて、顔に擦り傷を作っていた…
『お腹の赤ちゃんも奇跡的に無事でした。』
そう医者に言われて、ほっと胸をなで下ろした。
『しかし、お母さんの方はかなり危険な状態です』
その瞬間、俺は時間が止まったかのように思えた。
人工呼吸マスクをしている澪春は辛そうで…
ぎゅっと澪春の小さな手を握りしめる…
は?
嘘だろ…
目を覚ませよ…なぁ…