たとえ、涙が頬を濡らしても。
ー俊稀 sideー
ずっと窓の外に目を向けて何か考え事をしている澪春。
黒板を見て慌ててシャーペンを握って、板書を書き写していく姿に小さく笑ってしまった。
澪春が好き。
そう思ったのは小3からだ。
絵が上手くて、図工の成績はいつも5
賞状だって取っていたぐらいだった。
でも、澪春はその賞状を決して自慢せずにこう言ったんだ。
「あたしより上手い子なんて山ほどいるのにね。
審査員さん、きっと目の調子が悪かったのかも」
っておどけて笑ったんだ。
絵が好きなくせに、絵がどこか嫌いなんだと思う。
でも、絵を描く澪春は真剣そのもので描いている姿にいつも目を奪われる。