たとえ、涙が頬を濡らしても。
放課後、今日は部活がオフ日の水曜日。
曇り空の中、冬汰に早く会いたくて自転車を飛ばしてきたけれど、いつもの堤防の場所には居なかった。
大きくため息を付いて、堤防の斜面に持たれて座り、スケッチブックを取り出す。
パラパラと描いた絵を見るけど、どれも何かが足りないと考えてしまう。
勢いだけで、コンテストに出したくない。
でも、鉛筆をいざ握っても一向に進まなくて…
「…今日は会えないのかな」
『それって俺のこと?』
パッと顔を上げると、目の前には冬汰が居て…
思わず肩をビクッとさせてしまった。
『そんな驚かなくても…』
「…今日は会えないと思った。」
『なに、そんなに俺に会いたかったの?』
「はっ、えっと…いや…」
『ばーか。
今日は朝から体調があんまり良くなかったから、行こうか迷って遅くなった…』
遅くなった…って、まるで互いに待ち合わせしているみたいだ。
別に時間なんて合わせていないし、ただ…
たまたま…会えるだけ。
「体調、大丈夫なの?」
『まぁな』
そう少し笑った冬汰はあたしの横に座った。