たとえ、涙が頬を濡らしても。
そこには描いては消して、描いては消しての跡だけが残っていた。
『コンテストの?』
「まぁね…でも、絶対出してやるんだから!」
そう鉛筆を握りしめて歯を食いしばった澪春。
昨日とは全然違う。
まるで生きる楽しみを見つけたみたいに。
『…生きる意味…か。』
「冬汰にはないの?」
『ない。』
「人生一度きりじゃん!?
楽しまなきゃ…損だよ」
俺の目を真っ直ぐみつめて、だんだん目線を下にして俯く。
いいよな。お前には時間があって。
いくらでも好きなこと、これから出来んだろ。
『そんなのめんどくせーし。
適当に生きるだけだろ。』
「どうしてそんなにも生きることに後ろ向きなの?」
『…人間、いつかは死ぬ。
それが早いか遅いか…。
わり、飼い犬のこと思い出して…忘れてくれ。』
飼い犬なんて嘘だ。
こいつは関係ない。
やっぱり、会わなければ良かった。
死ぬまで、誰とも。
早く…死にたい。
感情なんて、いらねぇ。
明日なんて…
ー冬汰 side endー