たとえ、涙が頬を濡らしても。
型をすべて押し終わり、オーブンで焼き上がりを待つ。
《ガラガラ…》
『おっ!澪春と依知花みっけー!』
「あれ?俊稀くん部活はー?」
『筋トレ1時間してもう終わった!
雨だし、顧問が今日は休めって』
あたしの前の椅子に座って、机に突っ伏した俊稀からは疲れたオーラが伝わる…
なぜならこの高校の陸上部はかなり強いことで名が知れ渡っている、言わば強豪ぞろいなのだ…。
大会後には垂れ幕があると思えば、ほとんどが陸上種目だ。
「俊稀、お疲れさま」
『澪春もっと褒めて…』
突っ伏した姿勢で顔を上げてあたしを見る俊稀。
ったく。
でも…
「はいはい、よく頑張りましたー」
そう言って頭をわしゃわしゃ触る。
『棒読みじゃん…』
「棒高跳びで優勝したら、もーっといっぱい褒めてあげる!」
『なっ…優勝かよ』
バカ。
いつも、俊稀は頑張ってるでしょ。
俊稀なら優勝出来るって…あたし信じてるからさ。
だって、俊稀の棒高跳びファン一号はあたしなんだからね!