たとえ、涙が頬を濡らしても。
『俺の傍に居ろよ…』そう耳元で言われて、胸の鼓動がドクッと跳ね上がった。
私で…
「いいの?」
『ったく。
お前じゃなきゃ…誰に言うんだよ』
「へへっ、やった!」
傍に居ていいんだ。
会いに来てもいいんだ。
それを知って、たった今元気になった。
嬉しい!
単純に嬉しいの言葉しか出てこない。
『今日、絵描くの?』
「うん!今、いい案が思いついてね!」
はっと気づいた頃にはもう遅く…
勢いで抱きしめてしまった腕を、お互い恥ずかしくなってゆっくり下ろした。
慌ててあたしは、キャンパスバックからスケッチブックを取り出して笑って見せた。
「あはははっ…えっと冬汰、今日ギターは?」
『あるけど…どうした急に?』
「まぁまぁ、いいから構えてよ!」
なぜなら堤防でギターを弾く冬汰を描きたかったからだ。
あたしのコンテスト用の作品に。
やっぱり沢山描いてもどれもピンと来なくて、冬汰を描きたい!というその思いが強くなった。